この世の果てで

ユーラシア大陸、最西端、ポルトガル・ロカ岬。
ここに立つのは実に12年と1ヶ月ぶり。

あの日、不安でいっぱいの僕は、小さな勇気だけをたよりにして、この地から遥か東の果て、シンガポールへの自転車旅行へと出発した。
9ヶ月後、1万7000kmを走破し、たくさんの困難と、乗り越えられたたくさんの自信とともに無事シンガポールにたどり着いた。

あれは本当に、自分がやったことなのだろうか。
カスカイスへと向かう車窓から、12年前に走った道を心の道と重ねながら、どうしてもそう思ってしまう。

若くて幼稚だった。無知だった。無謀だった。
バカだけど前向きで、たくましくもあったと思う。

ポルトガルを早い段階で抜け、スペインに入った一日目の日記にこう書いてある。
「銀行があいていないので、スペインのお金を一銭も持つことなく先に進んでしまうことにした。(当時はユーロなんてなかった)
結局70キロ走って暗くなったのでヨーロッパで初めて野宿をすることにした。いくら探しても適当な場所が見つからないので、畑らしき場所にキョロキョロ辺りを見渡しながらテントを張った。今日はお金が両替できなかったので、何も買えず。残り物の魚の缶詰と、パスタをあえて夕食を済ました。しかーしこれがまずいまずい!そのうえ水溜りがそばにあるのか、蚊がブンブン襲ってくる。おまけに夜には雨が降ってきた。」

なんだかほんとうにたくましい。
それに比べると、今の生活はぬるま湯なこと。
過去から学べることはたくさんある。

ロカ岬には、昔も今も何も変わらない風景があった。
今日もたくさんの観光客が押し寄せ、大西洋の果ては相変わらず、霧に包まれまったく見えなかった。

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