栂池 – 蓮花温泉 – 木地屋 バックカントリー

3月後半だというのに雪が降っていた。まあ雨よりはましだよ、といいながら朝のゴンドラで栂池スキー場の最上部へと上がる。中旬から動き始めるロープウェイに乗り自然園へ。ここから天狗原までハイクアップ。ものすごい風で、雪は飛ばされスノーシューのアイゼンがよく刺さる。ただ、スキーのシールは効かないみたいで、大変そうだったけど。

天狗原へと上がると、吹きっさらしで何も遮るものがないため、本当に風がすごい。今日登ろうと思っていた白馬乗鞍なんて影さえ見えない。みんなのモチベーションは下がりまくり、どうしようか・・・蓮花温泉辿り着けないんじゃ、という気配が漂った。ただここにいるだけだと、どんどんと体温が低下するだけなので、早く決めようと向かってみることにした。幸いにも、しっかりと案内が木々についている。助かった。

乗鞍沢を降りたかったのだが、どうやら安パイの振子沢に入ってしまったみたい。昨日も雨ではなく雪だったのではないかという、軽いパウダー。斜度は足りないけれど、気持ちがいい!

途中からはいよいよだれたトラバース。スノーボーダーには辛い。歩くレベルだ。
ついにがまんしきれなくなって、我々は沢筋に突っ込んだ。何とかなるっしょ、と。これが実は大間違い。沢はかなり狭くなり、上部にはポッカリと亀裂。このままではヤバいのでは・・・と途中で思い直し、急な稜線を木にしがみつきながら上がること1時間くらい。コースにやっと復帰した。目的地の蓮花温泉はまではすぐ。
本当は13:00には着くのでは、と思っていたのに予想外の15:30着。寄り道し過ぎだろ〜。
夏はここまで道が来ているんだけれど、この時期は雪山をかなり自力で進まないと辿り着けない、スーパー秘湯である。内湯が新しくなってしまったのは残念だけど、お湯はすこぶる良い。携帯は圏外だし、電気も自家発電。電話は衛星電話のみ、というとてもコアな場所だった。たまの電波からの解放は気持ちがいいね。

21:00に消灯だけど、暗い中お風呂に入った。これはかなりサイコーだった。

翌朝、昨晩より降り続けた雪はいまだ止むことなく降っているのであった。新雪は50cm以上、雪崩的にはリスキー。多くの人が予定を変更して下山する中、我々はちょっとだけ雪倉山に登ってみようか、途中まで、ともがいてみることに。しかしラッセルが半端なくまったく進まない。

滑ってみよう、と選んだかなりの急斜面ですら、雪が深すぎて進まない。

こりゃダメだ、と引き返すことにした。ここで遊んだ3時間があとで苦しくなること、この時はまったく知らずに。。。

クラシックスキーツアーのセオリー通り、木地屋へ下ることにした。途中ほんの少しだけ、おいしい斜面はあったけど、ちょっと斜度が足りない。さすがスキーツアーコース。

最初の沢に下ってからが、結構辛かった・・・
川を徒渉し林道へと上がるも、すごい風で先攻パーティーのトレースは消えていた。つい今しがた2時間の激ラッセルをやって来た身としては、精神的にダメージが大きかった。ホワイトアウトで現在位置を見失っていた。予想の1/3も進んでなかった。時間だけが刻一刻と過ぎていった。この時間でこの場所は、ちょっとヤバいな、と本当に思った。天候は回復する兆しはなく、常に吹雪いているし。
ただ、安心していたのは今回のメンバーの二人がすごく信頼できる仲間だったこと。彼らとなら何があっても平気だろう、と思えたことは大きかった。

ようやく道を見つけ、コルへと上がり、後は下りのみ(のはず)となり、ほっとしたのはつかの間。

ウド沢を回り込み、右岸は滑れる予定が、雪が重すぎてまったく滑れず、地獄のトラバースラッセル。これが永遠のようだった。今日は夜まで歩き続けるであろうということを、このときちょっと覚悟した。ようやくトラバースが終わり、2時間ぶりの下りが!
ただそこはスキールート。すんなりと下らしてはくれず、小刻みなアップダウンが続くので、スノーボードをつけたり外したり。雪が深いからつぼ足だと歩きにくくて仕方ないし・・・最後には板を持つ腕の力すらなくなっていった。

ここまで来ると先攻パーティーのトレースがくっきりとついていて、スノーボード的には大変ありがたかった。止まらないように止まらないようにと踏ん張って進み、最後の集落へと続く林道は誰も仲間を待つことすらなく、とにかく無我夢中の集中した下り。
なんとか木地屋に17:15に降りることができたときは、全員歓喜の声を上げた。

糸魚川のタクシーを呼んで栂池に戻れたのは19:00。朝7:00に出発してから12時間、長い長い一日だった。

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