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10.ウユニ塩湖
11.催涙ガス、浴びる
12.世界で一番・・・
13.六千メートルの世界
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15.世の中、なんて不平等なんだ



 

 

Bolivia
15.世の中、なんて不平等なんだ

 

僕は幸せものだ。
日本人だから?
だいたいイエス、ときにノー。

海外を旅していると、いろんな旅人に会う。
90%はヨーロッパの白人。
黒人や、アラブ人や、インディアン、日本人以外の東洋人になんてめったに会うことがない。それはなぜか、理由は簡単、その国の経済力である。
GDPが世界で2位の日本人、我々の場合、真剣に2・3年働いて貯金すれば、1年〜2年間、世界を旅することができる。僕の場合もそうだ、2年と半年働いて、1年と半年旅ができる。
では発展途上国と呼ばれる国の人はどうか。2年間一生懸命働いても航空券代さえ稼げないのが現状だ。
その原因は一重に為替相場に起因する。
あまりにも周知の事実だが、日本では120円でコカコーラしか買えないとしても、このボリビアでは同じ金額で食堂でご飯が二回食べれ、市バスに8回乗れ、牛肉が500g買えてしまう。
だから僕が日本やヨーロッパ、アメリカなら一年も旅できないであろう金額で、発展途上国と呼ばれる国を長期間旅できてしまうということだ。
それってなんかおかしくないかい。なぜ、ヨーロッパや日本、アメリカの住民はお金を少しためれば自由に旅ができて、発展途上国と言われる国の住民はいくらがんばって働いても海外旅行なんてできないのだろう。これが正常で健康な世の中なのだろうか。資本主義、自由経済は健全で平等な体制だなんていえるのか。なんでここまでの格差が生まれてしまうのだろうか。ことはそんなにシンプルなことではないが、時にそれは不平等で不公平もいいとこだ。

今泊まっている宿は、完全な旅行者用の宿。現地人の宿泊者はいない。
ところで、この宿で働いている女性は2人。朝から晩まで働き尽くし。これまで旅先で見た最も働く人である。
でも、この女性たちは日々どう思っているだろう。毎日毎日、学生に毛が生えたような若者が入れ替わり立ち代り宿を訪れる。その若造が何をしているかといえば、遊んでいるだけ。「食う寝る遊ぶ」だ。ちょっと自国で働いただけで、ここを自由に旅できて、安い安いと大騒ぎ。
彼女たちは、そんな僕らをどう思って眺めているのだろうか。お金持ちのいいお客さんだろうか、いーや、「世の中不公平だわ」なんてたびたび感じていないだろうか。

このボリビアは南米で1・2を競うほど物価が安い。もちろん旅人はみんな喜ぶ。僕だって嬉しい。安い安いと現地の人から見れば「高級」なレストランやカフェに毎日入り、「ハイソサエティー」な生活を満喫できる。
しかし、おい待てよ、とそこで思う。
僕は日本では実に節約した生活を送っていた。毎日のように自炊していたし、外で飲むことも食べることもできるだけ避けた。
しかし、それがどうだ。
そんな身分の自分が、この国では安い安いときれいで高めなレストランに毎日入り、大衆食堂のメニューの2倍するコーヒーを啜る。
時々そんな自分に反吐が出る。これはお前の実力じゃないんだよ、みたいに。
そして反省して屋台でご飯を食べ、路上のジュースを飲む。すると気持ち的にはすっきりするのだが、お金が極端に減らないことになる。

インターネットで「ボリビアの大部分を占める先住民は今だその大体が貧困層にあり、一日一ドルに満たない金額で生活している」
なんて記事を読み、路上でものを売っているおばちゃんの疲れた背中を見ると、むしょうに寂しくなったりなんかして。
確かに、僕らの父や祖父母の世代の必死の努力があって、今の日本の経済はできた。
のんびり、気楽に、あまり一生懸命働かない発展途上国の人々なんて腐るほど見てきた。だからおまえらダメなんだよ、と時に思ったりもした。じゃあこの気持ちはいったいなんなんだろう。
先祖の遺産のおかげでたったちょっと働いただけでこうして自由に旅ができている自分、いったいこれは何なんだろう。

いっそ世界中同物価だったらいいのに、と今まで散々物価の差異の恩恵を旅で受けておきながら、そう思うときがある。日本人は物価の同じヨーロッパだって旅行できる。ボリビアの物価が同じだって旅行しに来るはずじゃないか、と。そうすれば、物価が高いと懸念されていたわが国日本にも大量の旅行者が訪れて経済がもっと盛り上がるかもしれない。
どうでしょう?
まあありえない話ですね。

何時の世だって、上を見れば限がない。
もっと裕福な家庭、環境に生まれたもの、才能に恵まれた人間なんて何処にだって、いくらでもいる。インドや中国にだって日本人以上の大金持ちはたくさんいる。
ボリビアではお金持ちに見える僕だって日本ではただの庶民で、これといっていい家庭に生まれたわけでもなければ、人より何かに恵まれているわけでもない。
しかし、下を見ると、それは上よりさらにさらに限がない。そんな言葉で表わせないどこまでもどん底な人々がいくらでもいる。
僕らは、たとえどんな状況に生まれても、ただ日本人として生まれたという事実が、時に他の国の人から見たら何て幸福なことだと思えるのかもしれない。
友達が少ないと嘆いてみたり、登校拒否をしてみたり、自閉症になってみたり、失恋して自殺してみたり。そんなのとっても幸福な悩みなのだよ、と。

世界は不平等に満ちている。
それはいつもそうだった。遥か遥か昔から。
そしてそれは今までがそうだったように、これからも変わることがないのだろう。

 

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