Trek to ABC / アンナプルナベースキャンプへ Day 3 目的地へとたどり着く

6:00に起きてみたものの、寝静まって誰も外にはおらず食堂の電気もつかない。ようやく6:45に電気がついたので、やっと食堂に行きパンケーキをオーダーした。順調にいけば長い一日となりそうなので7:30に出発することにした。

谷の中を進むのでとにかく寒い。遠くの山の上の方だけ微かに陽が当たっているが、しばらくこの寒さは続きそうだった。

森の中のがれ場を進み、2時間ほどでデウラリに着く。寒くてハルが水を飲んでくれないので、ここでジュースを買い与える。高山病対策に標高1,000mで1リットルの水分摂取が目安だが、そもそもそれは大人の話で体重が半分の子どもなんて半分くらいで良いのだろうか?でもジュースでもいいから飲んでおいたほうがいい。

ここで竹でできた杖をゲットして、チェーンスパイクを2組借りることができ、ABCに行ける気がしてきた。デウラリを出ると川の水は一部凍り、日が当たらない山の斜面には氷柱が見える。やはり冬のネパールも3,000mを超えるとなかなかの寒さなんだな。なんでこんなに薄着で来たのだろうかと毎日後悔している(笑)。日中だというのに、すでに日本から持ってきた防寒具は全て着込んでしまっていた。

10:30過ぎにようやく陽が出てきて暖かくなってきた。途中日本から来たおじさまがたのパーティーとすれ違ったけど、なんとおばあちゃまが83歳!遥と75歳さでびっくらこいた。遥はあと75年も登山ができるのか〜、すごいな。

マチャプチャレ・ベース・キャンプ(MBC)が近づくと山が間近に迫りもはや圧巻!ついに8,091mのアンナプルナⅠ峰が見えテンションだだ上がり。

MBCのロッジは広場が広く犬ものんびりとしていたりで、景観も良くて最高に居心地がよい場所だった。時間節約のためにと事前にお湯を入れておいた尾西のフリーズドライご飯をさくっと食べ、ABCにいく準備をする。

3つの選択肢を予め考えていた。
3,700mのこのMBCでやめるて泊まる。
4,130mのABCに登って宿泊する。
ABCをピストンしてMBCに戻ってくる。
この3つを現場合わせで決めようと、登りながらずっと考えてきたけれど、3つ目が一番大変だけど、一番安パイの選択だと思った。

明日からは天気も下り坂。高度をいきなり1,000m上げて4,100mで宿泊するのは、息子にとって高山病が出るかもしれずリスクが上がる。昼に登れば雪も緩み、気温も高い。ここまで頑張って急いできたいので、時間の余裕も十分あった。

装備を身軽なバージョンに変えて、貧弱な防寒具に身を包み、ABCへと向かう。道は適度に雪がついているが所々雪が溶けてぬかるんでおり、靴のグリップも効き、登りはクランポンは要らなそうだ。

それにしても凄すぎるロケーションに何度ため息が出たことか。
背後にはそびえるマチャプチャレは、ポカラ方面から見える尖った姿とは全く異なり、男らしいというか、筋肉質な感じの6,993mの巨大な山塊。前方にはアンナプルナ・サウス7,219m、右手にはアンナプルナⅠ8,091m。
今立っている場所から標高差が4,000mもある山に囲まれた谷を歩いている。夏とは異なって頂上から足元まで雪に包まれた景観が、さらに神秘度をあげていた。もう、なんというか凄すぎる。

急な丘を登ること30分、斜面はなだらかになり目指すABCが見えた。見えてからが長く、ここから1時間以上かかったと思う。風も強くなり止まっていると手足が冷えてきた。なんせ通気性も透湿性も抜群のトレランシューズである、装備が完全に間違っている…

前方左右見渡しては、この神が住むような場所(と言ったらチープな言い方だが)の凄さに感嘆のため息が出る。この凄すぎる光景の中、ハルは頭が痛くなってしまい、それどころではないようだ。

それでも彼を励ましながらゆっくり進み「Namaste (こんにちは)Annnapuruna Base Camp」と大きく書かれた看板に到達し、ハイタッチして記念撮影。ついにやったね!
ずっとここまで来られるか不安だったけど、途中でやめてもいいと思いながらもやっぱり来れてよかったなと思う。

天気予報通り雲が増え、あいにくアンナプルナの8,091mの頂は隠れてしまった。山荘で天気待ちをしたかったが、ハルがとにかく頭痛があって元気がない。

仕方なく自分だけで少し周囲を歩き、降りることにした。ちょうどその時雲が微かに晴れ、8,091mの山頂が見えたのだった。よかった!

下りは下りで壮大な景色。
これから登ってくる人たちが我々を祝福してくれた。もちろんちびっこというボーナス付きの激励だった。この子が行けたなら我々もと思ったに違いない。

予想以上に時間がかかったせいで、日はすっかり傾き、谷の中は陰り、急速に冷えてきていた。先ほどまで緩んでいた地面はカリカリのアイスバーンとなり、下りで激しく転んだので、チェーンスパイクを装着した。

日本に帰っても山に行こうな、というと。
「うん、たくさん行こう。日本の山はここより低いんだから余裕だよ。」と自慢げな回答。

「この景色を目に焼き付けといてくれよ」とは親の勝手な願い。
「焼けつけるって?」とハル。
「覚えといてね、ってことだよ」

「こんな楽しいこと忘れるわけないよ」

と親冥利に尽きる返答。本当かねぇ。
しかし、まったくもってすごい場所だった。

MBCに戻ると道中出会った83歳のおばあちゃんを連れたグループがのんびりと食堂で寛いでいて、はるの七並べ、ポーカー、ババ抜き攻撃に快く付き合ってくれた。リーダーはヒマラヤ協会の岩崎さんというお方で、8,000m峰もいくつか登っているらしい。83歳のおばあさまは渡辺さんという方で、話がとても面白かった。はるの相手をことさらしてくれたのはゆきおさん。みんな優しさあふれる御仁だった。
今日は大晦日で、彼らが日本から持ってきた年越し蕎麦をお裾分けしてもらえることになった。しかしその少し前にハルの高山病はピークに達し、部屋でダウン。まったくご飯は食べられないようだった。
この日本からのグループの中にお医者さんもいて、ハルの血中酸素濃度を測ってくれて、問題ないとお墨付きをくれたので、ひとまずは安心。高度を下げたのは正解だった。

年が開ける前に眠りについた。素敵な大晦日だったと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA