ジェームズ・タレルと地中美術館

四国トリップ Day4

5時に目覚めてしまった息子と、なかば仕方なく海まで散歩する。
缶コーヒーを買って、アスファルトに座って海を眺めた。ちょうど日の出の時間で、海が真っ赤に染まっていった。この時間をありがとう、ハル、と思った。

海を眺めている、ただそれだけでとても幸せな気分になった。今この時間を生きていると感じる瞬間、幸福きわまりないと思う。田舎は、島は、本当に豊かだと思った。なんで都会に住んでるんだろう、心豊かな場所はここなんじゃないか。

ゆっくりと神社へ参拝。斜めに傾いた石段が、なんだかすてきに感じてしまうわけで。すべてが島マジックにかかっていた。

雨の中地中美術館へと向かう。整理券をもらって15分だけ待って、いざ入館。入場料は2,000円もするのだけど、ここで躊躇しないのが大人になったなあと思う。一昔前だったら、きっとなにか理由をつけて入っていないと思う。もう一度来たいと思ったときに、ここに来る時間とお金を考えると、2,000円で躊躇してはだめと思うのだ。と、考えるとたった1万円をケチって行かなかったエジプトはナイルのアブ・シンベル神殿は本当によい教訓だなあ。行けば良かったという・・・

その値段にビックリする事なかれ、中には主に3名の作品しかない(建物としての安藤忠雄を入れれば4名なのだけど)。しかし十分だと思った。空間というか、建物と、その場所と、空気と時間ともちろん作品、すべてがセットとなって心に迫ってくる。もちろん、それは視覚だけではなく、そのほかの五感にも染み混む感じで、体の芯の方に訴えかけてくる気がするのだ。言葉ではうまく説明ができないが、とにかくやられた。

表現が難しいけど、個人的に言うと、映画『トロン』にしびれまくったのと、感覚的には似ている。コンクリートの斜めの切り方とか、四角の鋭さとか、タレルのふわふわとした掴み所のない光をつかった作品とか、すべてがしびれる。

夕方、そのタレルの南寺へと行く。
最初は暗闇で何も見えないのだけれど、目が慣れて行くにつれ見えてくるという人間の感覚をうまく利用した展示。昔、富士の樹海の洞窟のガイドをしていたことがあって、そのときいわゆる「暗闇体験」と呼びかなり多用していた技があったんだけど、基本的にはそれと同じ原理。現象としてはまったく不思議に思わないのだけど、これを美術作品、芸術としてしまったセンスの良さというか、その感覚というかが本当にすごいと思った。

最初は目の前は真っ暗。それでも前を凝視すると、自分の目の周囲に円形の物がくるくる光って回りだす。無音の時に聞こえる耳鳴りのような物の視覚版かと思ったがどうやら違う。200秒を数えたところで、前方にスクリーンが見てきて、350秒から先はそのスクリーンが徐々に遠ざかっていくという不思議な感覚を味わった。
そして目が慣れ、人も見え、歩けるようになるのだけれど、なるほどなあと純粋にすごいと感じる作品だった。

最後に「カフェ・コンニチワ」で瀬戸内海を見ながらおいしいコーヒーをいただく。自然ばっかり行っている自分には似つかわしくないアートな目的地だったけど、普段とは違うものをたくさん感じた島だった。

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